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私たちの歩み

私たちがとりわけ心惹かれる美のなかには、どこか別の時代のもののように思えるものがあります。

美術館や骨董店、歴史ある建物で、私たちはそれに出会います。彫刻の装飾や精緻な細工――それを生んだ作り手の顔を知ることもなく、とうにいなくなったものと思い込んでいます。遺産として大切にしながらも、いま暮らす空間にそうした仕事を迎えることは、ほとんど思い描きません。

18世紀のダマスカスの邸宅にあった、木の板張りの客間。彫刻と彩色、金彩をほどこした壁や戸棚の扉、壁龕が、彫刻の天井とステンドグラスの窓の下に並ぶ
《ダマスカスの間》、ダマスカス、1707年。メトロポリタン美術館(ニューヨーク)蔵。
彫刻の松と雲のあいだに置かれた、彩色と金彩の木彫の人物

Poiesis(ポイエシス)は、それとは別の出会いから始まりました。創設者のカリム・サルジは、井波彫刻に初めて触れたとき、その美しさに心を奪われました。そして、これほど奥深く洗練された伝統が、なぜ海外ではほとんど知られていないのかと考えたのです。

答えを求めて、彼は米国東海岸の美術館を巡り、収蔵品のなかに井波彫刻を探し、専門家に話を聞きました。けれども作品は一点も見つからず、この伝統を知る人にも出会えませんでした。答えは、井波にしかなかったのです。

2024年、彼は富山県の井波へ向かいました。十数人の職人に会って話を聞き、工房で長い時間を過ごし、職人たちを取り巻く町の人々とも知り合いました。そこで彼は、この工芸の現実を目の当たりにしたのです。

松の枝の彫刻の下に、彩色をほどこした武者の頭部の彫刻

そこにあったのは、守るべき遺産だけではありませんでした。いまも可能性をひらきつつある、生きた芸術でもあったのです。

井波で彼が出会ったのは、産業化以前にさかのぼる工芸をいまも営む人々でした。その技は師匠から弟子へと受け継がれ、伝統に、信仰に、そして妥協を許さない職人の倫理に根ざしています。

けれども、その継承はもはや約束されたものではありません。師匠たちは年を重ね、後に続く弟子はあまりに少なく、工房を支えるだけの仕事もありません。この工芸はいま危機にあり、遠くから称えるだけでは救えないのです。彼は、ひとつの問いに何度も立ち返りました。どうすれば、もっと多くの人がこの工芸を知り、それとともに暮らしたいと願うようになるのだろうか、と。

その問いから、Poiesisが生まれました。

Poiesis

ΠΟΙΗΣΙΣ

名詞 · ギリシア語「ポイエイン」(つくる)に由来

つくること。何かをこの世に生み出すこと。

私たちの使命は、卓越した装飾芸術の伝統を絶やさないことです。その伝統と、それを生み出す手について広く伝え、そこで得られた理解を制作の依頼へと結びつけて、伝統を現代の暮らしのなかへ運んでいきます。

私たちの活動

  • 制作依頼と協働

    私たちは、卓越した職人と、個人のお客様、建築家、インテリアデザイナー、さまざまな機関とを結び、住まいやインテリア、文化施設のためのオリジナル作品を手がけます。依頼主一人ひとりの構想に、職人の技術と知識、そして芸術的な想像力を重ね合わせて生まれる作品です。

  • 記録

    映像、写真、執筆、調査を通じて、伝統的な手仕事を支える歴史、技法、知識を記録しています。

    ドキュメンタリー『木に宿る声』
  • 紹介

    展覧会、実演、出版、文化プログラムを通じて、類まれな作品と、それを生み出す人々を紹介しています。

    2025年 井波彫刻 米国巡回展
提灯と彫刻で飾られた重層の曳山。法被姿の男たちが通りを曳いていく

曳山

工房に座る花嶋一作。周りに彫刻のパネルや像が並ぶ
井波の工房にて、花嶋一作。

まず、井波から

井波彫刻は、Poiesisが最初に、そして最も力を注いで取り組む対象です。私たちは井波でも屈指の職人たちと手を携え、すぐそばで仕事をともにしています。2025年には、プリンストン大学からスミソニアン国立アジア美術館まで、米国各地の人々のもとへ彼らの作品を届けました。私たちには共通の夢があります。この生きた伝統が、新たな居場所と新たな依頼主、そして新たな弟子に出会うことです。

井波彫刻を知る
Poiesis創設者 カリム・サルジ

創設者

カリム・サルジ

プリンストン大学在学中、カリム・サルジはインターネットで井波彫刻を知り、その美しさと豊かな歴史、そしていまもそれを彫り継ぐ町に魅了されました。それがきっかけで調査のために井波を訪れ、以来研究を続けながら、Poiesisを育て、町の職人たちとの関係を築いてきました。学部生時代の研究と渡航は、プリンストン大学および同大学ケラー・センターの支援を受けて行われました。

2025年には『井波彫刻 米国巡回展』でPoiesisを代表し、彫刻師の三代南部白雲とともに、プリンストン大学やジャパン・ハウス ロサンゼルスから、スミソニアン国立アジア美術館、ホノルルに至るまで、各地の人々にこの工芸を紹介しました。ドキュメンタリー『木に宿る声』は、この巡回展で初上映されました。

ニューヨークを拠点に活動しています。

日本担当シニアアドバイザー

中嶋勝彦

中嶋勝彦は、Poiesisの日本におけるシニアアドバイザーであり、私たちと井波をもっとも近くで結ぶ存在です。Poiesisのチームの一員として、創設者とともに、また井波彫刻協同組合と連携しながら、職人と依頼主のあいだに立つ助言者、連絡役、通訳を務めています。

2025年には『井波彫刻 米国巡回展』に同行し、現在も職人たちと直接やりとりしながら、日本でのプロジェクトを取りまとめています。

中嶋勝彦
写真は後日掲載

美は、暮らしのなかに

美は、遠くから眺めるためだけのものではありません。人の手でつくられ、身近に置かれて、私たちが暮らす部屋にこそあるべきものです。

目と羽に彩色をほどこした、浮き彫りの孔雀
井波の浮き彫り

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私たちの歩み

私たちがとりわけ心惹かれる美のなかには、どこか別の時代のもののように思えるものがあります。

美術館や骨董店、歴史ある建物で、私たちはそれに出会います。彫刻の装飾や精緻な細工――それを生んだ作り手の顔を知ることもなく、とうにいなくなったものと思い込んでいます。遺産として大切にしながらも、いま暮らす空間にそうした仕事を迎えることは、ほとんど思い描きません。

18世紀のダマスカスの邸宅にあった、木の板張りの客間。彫刻と彩色、金彩をほどこした壁や戸棚の扉、壁龕が、彫刻の天井とステンドグラスの窓の下に並ぶ
《ダマスカスの間》、ダマスカス、1707年。メトロポリタン美術館(ニューヨーク)蔵。
彫刻の松と雲のあいだに置かれた、彩色と金彩の木彫の人物

Poiesis(ポイエシス)は、それとは別の出会いから始まりました。創設者のカリム・サルジは、井波彫刻に初めて触れたとき、その美しさに心を奪われました。そして、これほど奥深く洗練された伝統が、なぜ海外ではほとんど知られていないのかと考えたのです。

答えを求めて、彼は米国東海岸の美術館を巡り、収蔵品のなかに井波彫刻を探し、専門家に話を聞きました。けれども作品は一点も見つからず、この伝統を知る人にも出会えませんでした。答えは、井波にしかなかったのです。

2024年、彼は富山県の井波へ向かいました。十数人の職人に会って話を聞き、工房で長い時間を過ごし、職人たちを取り巻く町の人々とも知り合いました。そこで彼は、この工芸の現実を目の当たりにしたのです。

松の枝の彫刻の下に、彩色をほどこした武者の頭部の彫刻

そこにあったのは、守るべき遺産だけではありませんでした。いまも可能性をひらきつつある、生きた芸術でもあったのです。

井波で彼が出会ったのは、産業化以前にさかのぼる工芸をいまも営む人々でした。その技は師匠から弟子へと受け継がれ、伝統に、信仰に、そして妥協を許さない職人の倫理に根ざしています。

けれども、その継承はもはや約束されたものではありません。師匠たちは年を重ね、後に続く弟子はあまりに少なく、工房を支えるだけの仕事もありません。この工芸はいま危機にあり、遠くから称えるだけでは救えないのです。彼は、ひとつの問いに何度も立ち返りました。どうすれば、もっと多くの人がこの工芸を知り、それとともに暮らしたいと願うようになるのだろうか、と。

その問いから、Poiesisが生まれました。

Poiesis

ΠΟΙΗΣΙΣ

名詞 · ギリシア語「ポイエイン」(つくる)に由来

つくること。何かをこの世に生み出すこと。

私たちの使命は、卓越した装飾芸術の伝統を絶やさないことです。その伝統と、それを生み出す手について広く伝え、そこで得られた理解を制作の依頼へと結びつけて、伝統を現代の暮らしのなかへ運んでいきます。

私たちの活動

  • 制作依頼と協働

    私たちは、卓越した職人と、個人のお客様、建築家、インテリアデザイナー、さまざまな機関とを結び、住まいやインテリア、文化施設のためのオリジナル作品を手がけます。依頼主一人ひとりの構想に、職人の技術と知識、そして芸術的な想像力を重ね合わせて生まれる作品です。

  • 記録

    映像、写真、執筆、調査を通じて、伝統的な手仕事を支える歴史、技法、知識を記録しています。

    ドキュメンタリー『木に宿る声』
  • 紹介

    展覧会、実演、出版、文化プログラムを通じて、類まれな作品と、それを生み出す人々を紹介しています。

    2025年 井波彫刻 米国巡回展
提灯と彫刻で飾られた重層の曳山。法被姿の男たちが通りを曳いていく

曳山

工房に座る花嶋一作。周りに彫刻のパネルや像が並ぶ
井波の工房にて、花嶋一作。

まず、井波から

井波彫刻は、Poiesisが最初に、そして最も力を注いで取り組む対象です。私たちは井波でも屈指の職人たちと手を携え、すぐそばで仕事をともにしています。2025年には、プリンストン大学からスミソニアン国立アジア美術館まで、米国各地の人々のもとへ彼らの作品を届けました。私たちには共通の夢があります。この生きた伝統が、新たな居場所と新たな依頼主、そして新たな弟子に出会うことです。

井波彫刻を知る
Poiesis創設者 カリム・サルジ

創設者

カリム・サルジ

プリンストン大学在学中、カリム・サルジはインターネットで井波彫刻を知り、その美しさと長い歴史、そしていまもそれを彫り継ぐ町に魅了されました。それがきっかけで調査のために井波を訪れ、以来研究を続けながら、Poiesisを育て、町の職人たちとの関係を築いてきました。学部生時代の研究と渡航は、プリンストン大学および同大学ケラー・センターの支援を受けて行われました。

2025年には『井波彫刻 米国巡回展』でPoiesisを代表し、彫刻師の三代南部白雲とともに、プリンストン大学やジャパン・ハウス ロサンゼルスから、スミソニアン国立アジア美術館、ホノルルに至るまで、各地の人々にこの工芸を紹介しました。ドキュメンタリー『木に宿る声』は、この巡回展で初上映されました。

ニューヨークを拠点に活動しています。

日本担当シニアアドバイザー

中嶋勝彦

中嶋勝彦は、Poiesisの日本におけるシニアアドバイザーであり、私たちと井波をもっとも近くで結ぶ存在です。Poiesisのチームの一員として、創設者とともに、また井波彫刻協同組合と連携しながら、職人と依頼主のあいだに立つ助言者、連絡役、通訳を務めています。

2025年には『井波彫刻 米国巡回展』に同行し、現在も職人たちと直接やりとりしながら、日本でのプロジェクトを取りまとめています。

中嶋勝彦
写真は後日掲載

美は、暮らしのなかに

美は、遠くから眺めるためだけのものではありません。人の手でつくられ、身近に置かれて、私たちが暮らす部屋にこそあるべきものです。

目と羽に彩色をほどこした、浮き彫りの孔雀
井波の浮き彫り

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